● ● ごあいさつ ● ●

- Prologue -
私は海を漂う一匹のタコ。脚は八本、骨はない。私は腹が減っていた。
今日もいつもと同じ、大海の片隅で、岩陰に身をひそめ、
私の胃袋を満たしてくれそうな、獲物を待つ。
そう、私は腹が減っていた。
一昨日の夜、寝ぼけてこの岩陰に迷い込んできた、肉付きの悪いべらを一匹。
彼は私に食べられる前に、腹が減ったとかなんとか、寝言をつぶやいていた気がする。
彼には悪かったが、彼はお世辞にも美味いとはいえなかった。
それ以降、何も口にしていない私もまた、腹が減っているのだった・・・。
そして今、私の目の前にはひどく弱り切ったべらが一匹ぶら下がっている。
彼は力なく泳ぎだそうとはするのだが、何かに引き戻されて、私の目の前で留まる。
不思議な光景ではあったが、ようやく訪れた獲物に、私は一本の脚をのばす。
慎重に、慎重に。
「あなたが食べられてしまうよ。」
振り向くと小さいスジエビが一匹こちらを見ている。
「あんな弱り切ったべらにどうして私が食べられるのだ、邪魔をするならお前から食べてやろうか。」
「私ではあなたの胃袋を満たせないでしょう。それに私だってまだ生きていたい。」
「では、邪魔をするな、私は腹が減っているのだ。」
「あれはあなたを捕えるための、しかけなんだよ。」
「私を捕えるためのしかけ?」
私はのばしかけていた脚をそこにいったんとどめた。
「あのべらはあなたをおびき出すために、あんなに弱らせられているのさ。」
「どうしてお前にそんなことが分かるのだ。」
「前にも同じようなことがあった。あなたと同じような腹をすかしたタコが
弱りきったべらにとびかかった瞬間、海の上に引き去られてしまったよ。
それによく見てみな、あのべらは見えにくい紐で海の向こうにつながれているのさ。」
私は目を凝らした。
スジエビの言うとおり、べらからすうっと一本の紐が真上に伸びているのが見えた。
しかし、私は腹が減っていた。
このべらを今すぐ八本の脚でくるんで、胃袋に納めてしまいたい。
私の頭の中は空腹感で満たされ、スジエビの話が入り込む隙間などほとんどない。
私はいったんとどめていた脚を、もはやこのべらを味わうように近づけ始めている。
今スジエビが私に向かってさようならとか何とか言った気がしたが、定かではない。
ほかの脚をべらに向かわす準備に忙しかったからだ。
一本の脚がべらに触れた時だった。
「僕も腹が減っていたんだ。」とその弱ったべらは言った。
私は残る七本の脚をべらに向かわせ、ついに八本の脚がべらをとりまいた。
私はこの辺に生きる者の中では器用な方なので、紐はすぐにほどくことができた。
と同時に、紐がいきよいよく引き去られていった。
そして私はそのべらを取り囲んでいた脚を解いた。
弱りきっていたべらは力なく泳ぎ去っていく。
少しの間その姿を見送った。
私も岩陰に戻って、ほっと一息ついているスジエビに言った。
「やっぱりべらはまずいから、今日はエビにします。」
「たこゆらぐ」 (著:皆瀬二郎)
委員長より一言
どうも、こんにちわ。今回、このイベント『たこゆらぐ。』を開催するにあたりまして、意識したのは世代感でありまして。
「阪神タイガースが21年ぶりに優勝した1985年、そんな大阪総お祭り騒ぎ状態の中生れ落ちた我々が、上の世代を巻き込みつつ地下から下克上的に盛り上げるのである。」というコンセプトの元、やらせていただきます。
たこやきピンポン食堂のおいしいたこ焼きを食べながら、店長じーまさんの素敵な雑貨を買ったり見たりしつつ、 じっくり心にしみ込んでくる音楽を展開する5組のアーティストとともに心と体をゆらがせていただきたい。
そんなイベント『たこゆらぐ。』 転換時間に大活躍していただくDJのお二方もええ空気を醸し出してくれること間違いなし。ゆらぐもよし、踊り狂うもよし。
今回は私がやっておるバンドOctavioと、かねてより親交の深い同世代バンドN'djamenan;jamena との共催でお送りします。
たこゆらぐ。実行委員長に勝手に祭り上げられた感のある Octavio すみの
詳細
〜 たこゆらぐ 〜日時 11月28日 (土) 夕方 6:00 開場、6:30 開演
場所 南船場の「地下一階」とゆうところ
料金 前売1,500円(当日1,800円)と、別途1ドリンク500円